みなさま 良いお正月を過ごせましたでしょうか。
オミクロン株による感染拡大が深刻化している欧州で、ここぞとばかりに籠りきりの寝正月を過ごしたTAKIママです。
それも、もう終わり。
明日からまた、子ども達の学校が始まります。
こちらでは記録的に暖かいお正月となりました。
今日は、ひとつ冬の思い出話しを。
昔々 TAKIママがママになる前、ドイツはバイエルン州のとあるスキー場で働いておりました。
午前中に仕事をして、午後は好きなように滑り、夕方には家に帰ってダラダラできる、夢のような毎日です。
ある時、私が担当になったのは英国からの団体客でした。
期間は2週間、午前と午後2時間ずつスノーボードレッスンを行うお仕事です。
話を聞くと、英国軍に所属する医療チームで、2班に分かれてドイツに冬のリクリエーション旅行に来ているのだとか。
旅行に参加している人数は1回の班で200人ほど。
旅行にスキーレッスンもパッケージになっているので、ほぼ全ての参加者がレッスンを受けます。
その時期は、スキースクール内の英語対応出来る人員が総動員されていました。
ほとんどの人はスキーレッスンを希望するらしいのですが、なかには少数スノーボードレッスンを希望する人もいまして。
で、英語対応しか出来ない(当時はドイツ語能力ほぼ0でした。今でもドイツ語でのレッスンはきっと無理がある。)私が真っ先にスノーボード担当として差し出されたのであります。
私達のグループの参加者は男性3名、女性3名。
医師と看護師です。
内、ひとりの男性はスノーボード経験者で、他のメンバーと一緒にレッスンに参加する意味が無く初日に離脱。
グループ内でレベルに差があり過ぎる場合、他のレッスングループでマッチングして、なるべく同グループ内でレベルが同じになるように工夫するものなのですが、この時はスノーボードレッスンが私のグループだけだったのが非常に辛かった。
ひとり抜けて、男性2名、女性3名となった私達のグループ。
全員が全く初めてスノーボードをします。という初心者コース。
その内の男性一人はまあ普通だった、もとい彼だけが唯一“普通の”生徒でした。
もう一人の男性はですね、普段からジムに通い、スポーツは何でもやってみたい、やったら何でも出来ちゃう人で、スキージャケットの上からでも引き締まった体が分かるほどの身のこなし、というか身の軽さ。
トライアスロンとかもやってるそうです。
でしょうね!
こういう人はね、正直レッスンとか必要ないですよ。
ビデオや、今で言うならYouTubeとかのチュートリアル動画見て、いきなりリフトで上ってもなんとか滑降してきちゃうタイプ!
一方の女性陣。
一番若い女性の看護師さん。
午前のレッスンはなんとかついて来ていたんですが、昼食の時に異変が。
なんでも彼女、ヴィーガンでして、肉をはじめ動物性のものが一切食べられない。
ドイツ・バイエルンの、しかもこんな山奥の田舎で当時、肉無し料理はほとんどありませんでした。
山小屋のメニューで彼女が口に出来たのはフレンチフライのみ。
サラダでさえ小さな肉片やチーズが入っていて食べられない。
ドイツに来て何も食べられない日が2日目になり、かわいそうに青白い顔がだんだんと土色になり、貧血でフラフラ、立っていられない。
とてもスノーボードのレッスンを受けられるような状態ではなく、1週目でリタイアとなりました。
いや、看護師さんてそんな不健康でやっていけるの?
けっこう体力の要る仕事なイメージあるけど。
そして残り2名の女性はちょっとぽっちゃりなアラフォー淑女。
「去年はスキーのレッスンに参加して全然ダメだったの!だから、今年はスノーボードにしたのよ、アハハ!!」
・・・そ、そうですか。
世の中にはどうも運動に向かない人というのが存在します。
私も運動神経をどこかに置いてきた人間なので、そんな人達が体を動かす事にますます億劫になる気持ちもよく分かります。
スキーやスノーボードは自転車に乗れる人なら、最初のレッスンを受けて2,3時間でだいたいは取りまわせるようになる類のスポーツだと思うのですが。
この人たちの場合はスノーボードのボードが登場する前、準備体操の時点で全くついて来れず、その前にレンタルのズボンが裂けたり、すったもんだあった。
用具が壊れるとか、間違ったチケット買っちゃう、とか一人の人にだけ(しかも決まってレッスンについて来れないタイプ)にトラブルが集中するのは何故なんでしょうか?
確かにケーブルカーであがって来た場所は、標高600mくらいで空気は薄いかもしれん。←そんな事はない。
借り物のスノーボードブーツで慣れない雪上を歩くのは難しいだろう。←でも平地。
さては夜勤明けか。←それは絶対ない。
昨日の夜、遅くまで飲んどった。←この可能性が一番高い。
その息のあがりようが日常生活をちゃんとおくる事が出来ているのか心配になるレベルで。
例えば、スーパーに行ってカートを押して引き回す動作や、車の運転、階段の上り下り、瓶や缶の蓋を開ける、など日常で必要な些細な動作もままならないんじゃないだろうか。
だって、スノーボードを抱えて、グループが円になり、集まって、私が挨拶をして、さぁ準備体操からはじめましょう。よろしくお願いします。
というところでもう息が上がっていた!
はぁはぁ、ぜぃぜぃ。
はぁはぁ。暑いわ~。
上着を脱ぐ。(←ビッグサイズの方はサイズの合うウェアが無く、余裕のないウェアを選んでしまい窮屈になる&山の上は寒いと思い着すぎる&歩くだけで暑くなる&へばる傾向があります。)
医療従事者って本当に体力の要る仕事だと思っているんですが、何でしょうか、彼女たちは仕事の前にほうれん草の缶詰でも流し込んでいるんでしょうか。
それでも『スノーボードレッスン』というお題が無ければ、みなさん会話も楽しく、優しく、礼儀正しくて、人柄の素晴らしい方ばかりでした。
それは本当に。
しかし、私の仕事はスノーボード教師。
この2週間で、なんとかこの人たちにスノーボードのス!くらいは楽しさを知ってもらいたい。
なにより難しかったのが、先の運動神経の塊トライアスロン氏と女性達の差が大きすぎる事。
女性達が準備運動の為に自分の立ち位置に移動しようとよっこら歩いているうちに、トライアスロン氏はその辺3周くらい走ってくる勢いで。
さすがに言いました「このグループを同時進行でレッスンするのは無理です。」と。
話し合いの結果、午前の部は男性、午後の部は女性のレッスンを行う事に同意してもらいました。
そんな力業にもかかわらず、2週間後の彼女たちはまだ準備体操から進んでいなかったよね。
きっと次の年に「一昨年はスキー、去年はスノーボードのレッスンを受けたけど全然ダメだったんだよね。アハハ!」って笑ってたに違いない。
もう、雪だるまやカマクラ作ったりするコースがいいんじゃないかな。(それさえも出来ない気がする。)
数々のレッスンの中でも特に忘れがたいお客さんでした。
そして、2週間の滞在最終日、金曜日の夜に彼らの宿泊しているホテルで開催されるパーティーに私達スクールの担当教師陣も招待されまして。
豪華なお料理と、お酒がふんだんに振舞われ、楽しい時間を過ごしました。
10時頃になり、宴はそろりと終わりに近づき、飲み続けたい人だけが残って、あとの人は各自ホテルの部屋に戻りはじめました。
私も生徒さんだったグループのメンバーにお礼とお別れの挨拶をして、おいとまする事にしました。
淑女A:「ねぇ 待って。どうやって帰るの?家は近いの?」
私:「家は10分くらいなので、歩いて帰ります。」
淑女A:「えっ!歩いて帰るって、ひとりで?!外はもう真っ暗だよ。」
私:「大丈夫です。」(来る時にもう既に真っ暗だったし。)
淑女B:「タクシー呼びなよ。危ないよ。」
きっとタクシー待ってる間に家帰れるくらいだから。って、徒歩10分の距離、タクシー走ってくれないから。
淑女A&B:「ロンドンでこの時間、女性一人で歩いてたら絶対“コレ”だよ!」
と、2人して両手を上げてホールドアップの真似をする。
や、可愛いかよ。
こんな、田舎で観光客の来ない住宅街の中を歩いて思いつく危険なんて、屋根から落ちて来る雪に埋もれる。くらいしかないわ。
確かに真っ暗ではあるけど、雪の反射光って夜でもけっこう明るいんだよね。民家から漏れる淡い光で十分。
そうか、ロンドンってそんな危険な街なのか。
2回ほど行った事があるけど、暗くなってからは出歩いていないし、現地在住の知人に案内してもらったから危ないと思った事はなかったんだ。
ロンドン 危険。
はい、インプットされました。
この話は次回に続く→